大切な家族を亡くし、深い悲しみの中にいるご遺族ですが、弔問に訪れてくださる方々をお迎えするという、大切な役割も担わなければなりません。弔問客は、故人を悼み、ご遺族を慰めるために足を運んでくださっています。その温かい気持ちに対し、感謝の心を持って、誠実に対応することが、故人に代わってできる最後の務めとも言えます。まず、服装ですが、ご自宅で弔問客を迎える場合は、必ずしも喪服を着用している必要はありません。通夜の前であれば、黒や紺、グレーといった地味な色の平服(略喪服)で対応するのが一般的です。ただし、玄関先で出迎えることを考え、エプロンなどは外しておきましょう。玄関の設えにも気を配ります。靴が散らかっていないか、清潔なスリッパが用意されているかなど、お客様を迎える最低限の準備は整えておきます。弔問客が到着されたら、玄関で「本日はお忙しい中、わざわざお越しいただき、ありがとうございます」と、まず感謝の言葉を述べます。そして、リビングや故人が安置されている部屋へとお通しします。故人と対面していただく際には、「安らかな顔をしておりますので、どうぞお顔を見てやってください」と声をかけ、ご遺族がそっと白布を外します。弔問客がお線香をあげ、手を合わせている間は、少し離れた場所で静かに待ちます。お祈りが終わったら、お茶やお茶菓子を勧めます。「どうぞ、お時間の許す限り、ゆっくりしていってください」と声をかけますが、相手が辞退された場合は、無理強いはしません。会話の中では、故人の思い出話などを交え、弔問に来てくださったことへの感謝を改めて伝えます。弔問客が帰られる際には、再び玄関まで見送りに出ます。「本日は本当にありがとうございました。〇〇(故人)も喜んでいることと存じます」と、最後にもう一度、感謝の気持ちを伝えてお見送りします。ご遺族は、精神的にも肉体的にも非常に辛い状況にあります。すべてを完璧に行う必要はありません。大切なのは、悲しみの中にも、足を運んでくださった方々への感謝の気持ちを忘れず、誠実な態度で接すること。その姿勢そのものが、何よりものマナーとなるのです。