葬儀を執り行うにあたり、ご遺族は悲しむ間もなく、様々な準備に追われます。その中でも、弔問に訪れる方々を最初にお迎えする「受付」の準備は、葬儀全体の印象を左右する重要なポイントです。スムーズで心のこもった対応ができるよう、受付で記帳のために準備すべきものを、事前にしっかりと確認しておきましょう。まず、最も中心となるのが「芳名帳」です。伝統的なのは、和紙などで作られた帳面タイプのものです。参列者が順番に書き込んでいくため、一覧性が高く、故人との関係性が深い親族の葬儀などで、格式を重んじる場合に適しています。一方で、近年急速に普及しているのが「芳名カード(ゲストカード)」です。これは、一人一枚ずつカードに氏名や住所を記入してもらう形式です。参列者が多い場合でも、複数人が同時に記入できるため、受付の混雑を緩和できるという大きなメリットがあります。また、カードは五十音順に整理しやすく、葬儀後の香典返しのリスト作成作業が格段に楽になります。プライバシーの観点からも、他の参列者に自分の住所を見られることがないため、好まれる傾向にあります。葬儀の規模や参列者の層を考慮して、どちらの形式を選ぶかを決めましょう。次に、筆記用具の準備です。芳名帳の場合、弔事用の薄墨の筆ペンを用意するのが最も丁寧ですが、書き慣れていない方も多いため、黒のサインペンやボールペンも数本併せて用意しておくと親切です。インクがかすれていないか、事前に必ず試し書きをしておきましょう。そして、受付周りに必要な備品も忘れてはなりません。いただいた香典を納めるための「香典盆」、会社名義で来られた方が名刺を差し出した際に受け取る「名刺受け」、そして返礼品をお渡しするための「手提げ袋」などです。また、受付係の方が香典の現金をその場で管理する場合は、盗難などを防ぐための現金保管用のバッグや、会計記録用のノートなども必要になります。これらの備品は、ほとんどの場合、葬儀社がプランの一部として用意してくれます。打ち合わせの際に、どこまでを自分たちで準備し、どこからを葬儀社にお願いするのかを、明確に確認しておくことが重要です。受付は、ご遺族に代わって弔問客への感謝を伝える、大切な「顔」となる場所。万全の準備を整え、安心して受付係の方にお任せできるようにしましょう。