父が亡くなったのは、真冬の寒い夜でした。病院の霊安室で、呆然とする私と母に、看護師さんから「葬儀社はお決まりですか」と尋ねられました。全く何も考えていなかった私たちは、病院から紹介された葬儀会社に、そのまま連絡を取りました。それが、私の後悔の始まりでした。すぐに駆けつけてくれた担当の方は、物腰も柔らかく、動揺している私たちを優しくリードしてくれました。その時は、まるで救いの神のように思え、「この人になら任せられる」と、他の会社と比較検討することなく、その場で契約してしまったのです。打ち合わせでは、「お父様のためですから」という言葉と共に、いくつかのプランが提示されました。一番安いプランは、祭壇の写真があまりにも寂しく見え、父に申し訳ないような気がして、結局、一つ上のグレードのプランを選びました。見積もり書も提示されましたが、悲しみと疲労で頭が回らず、細部まで確認する余裕はありませんでした。「一式プラン」という言葉を信じ、これで全てが収まるのだろうと、安易に考えていたのです。しかし、葬儀を終えて送られてきた請求書を見て、私は愕然としました。見積もり額を大幅に上回る金額が記載されていたのです。内訳を見ると、「ご遺体安置料(追加分)」「ドライアイス追加費用」「返礼品追加分」といった、見積もりにはなかった項目がずらりと並んでいました。火葬場が混んでいて、安置日数が延びたこと。予想以上に弔問客が多く、返礼品が足りなくなったこと。それらは仕方のないことかもしれません。しかし、そうした追加費用が発生する可能性について、事前の説明がほとんどなかったことに、私は強い不信感を抱きました。さらに、式の進行においても、私たちの知らないところで次々と物事が決まっていき、父が好きだった音楽を流したい、というささやかな希望さえ、伝えるタイミングを逸してしまいました。父らしい、温かいお別れがしたかったはずなのに、気づけば、すべてが決められた流れ作業のように終わっていました。この経験から私が学んだのは、動揺している時こそ、冷静に比較検討する時間を持つ勇気が何よりも大切だということです。そして、見積もりの細部まで徹底的に質問し、担当者と密にコミュニケーションを取ること。それを怠った私の甘さが、父への最後の親孝行に、小さな影を落としてしまった。その悔しさは、今も私の胸に深く刻まれています。
私が葬儀会社選びで深く後悔したこと