葬儀に際して、「どうしても都合がつかず、通夜や告別式には参列できないけれど、せめて香典だけでも渡したい」あるいは、逆に「香典を用意する余裕はないけれど、弔問して直接お悔やみを伝えたい」といった状況に置かれることがあるかもしれません。このような時、弔問と香典は必ずセットでなければならないのでしょうか。結論から言えば、どちらか一方だけでも、マナーとして全く問題ありません。大切なのは、故人を悼み、ご遺族をいたわる気持ちを、自分のできる形で誠実に示すことです。まず、弔問には行けないが、香典を渡したい場合です。これは、非常に一般的な対応です。その方法はいくつかあります。一つは、通夜や告別式に参列する友人や同僚に、香典を預けて代理で渡してもらう方法です。この場合、不祝儀袋の表書きは自分の名前で書き、誰に預けたかが分かるようにしておくと親切です。もう一つの、より丁寧な方法は、現金書留で喪主宛に郵送することです。この際には、必ず現金書留専用の封筒を使用し、不祝儀袋に入れた香典と共に、お悔やみの言葉を綴った短い手紙を同封します。この「お悔やみ状」に、参列できないお詫びと、ご遺族を気遣う言葉を記すことで、あなたの気持ちはより深く伝わるでしょう。次に、香典は持参せず、弔問のみに伺う場合です。これも、決して失礼にはあたりません。特に、故人が学生時代の友人であったり、ご自身が経済的に苦しい状況にあったりする場合など、香典を出すことが負担になることもあります。香典はあくまで「気持ち」であり、義務ではありません。香典がないからといって、弔問をためらう必要は全くないのです。ただし、手ぶらで伺うのが気まずいと感じる場合は、菓子折りや果物、故人が好きだった飲み物などを「御供」としてのしをかけて持参すると良いでしょう。その際、受付で記帳する際に、名前の横などに「香典は辞退させていただきます」と書き添えるか、受付の方に「お香典は後日改めて、と上司に言付かっております」などと、角の立たないように伝えるとスムーズです。弔問も香典も、弔意を示すための手段に過ぎません。形式にとらわれず、自分にできる精一杯の方法で、故人とご遺族に心を寄せることが、何よりも尊い供養となるのです。