近しい親族として葬儀に参列する立場は、一般の弔問客とは少し異なります。故人に最も近い存在の一人として、遺族に寄り添い、儀式を滞りなく進めるためのサポート役を担う場面もあるでしょう。そのため、持ち物の準備もより一層、丁寧に行う必要があります。まず、絶対に忘れてはならないのが、仏式の葬儀における数珠です。数珠は故人の冥福を祈り、仏様と心を通わせるための大切な法具です。貸し借りはマナー違反とされていますので、必ず自分自身のものを持参しましょう。宗派によって正式な形は異なりますが、どの宗派でも使える略式の数珠を一つ持っておくと安心です。次に、香典です。現金をそのまま持参するのは大変失礼にあたるため、必ず不祝儀袋に入れて準備します。表書きは、故人の宗派が分からない場合は「御霊前」と書くのが最も無難です。金額の相場は故人との関係性によって大きく異なりますが、親族であれば一万円から十万円程度が目安となります。その香典を包むのが袱紗です。袱紗は、香典袋が汚れたり水引が崩れたりするのを防ぐだけでなく、相手への敬意を示すための大切な道具です。弔事では、紺や深緑、紫といった寒色系の色の袱紗を用います。受付で香典を渡す際に、袱紗から取り出して差し出すのが正式な作法です。ハンカチとティッシュも必須です。涙を拭うためのハンカチは、白か黒の無地のものが基本です。タオル地のものはカジュアルな印象を与えるため避け、綿や麻、ポリエステル製のものを選びましょう。これらの基本的な持ち物を、光沢のない黒い布製のバッグにまとめておきます。殺生を連想させる革製品や、華美な飾りがついたバッグは避けましょう。これらはあくまで形式的な準備ですが、その一つひとつに故人を偲び、遺族を敬う心が込められています。最も大切な持ち物は、静かに故人を悼み、悲しみにくれる家族に寄り添う「心」であることを忘れてはなりません。
親族として参列する葬儀の持ち物