「生きているうちから、お葬式の話をするなんて縁起でもない」。かつては、そう考える方がほとんどでした。しかし、人生の最期を自分らしく締めくくりたいと願う「終活」という考え方が広まる中で、元気なうちに葬儀会社へ「事前相談」に訪れる方が、近年急速に増えています。この事前相談は、決して死を急ぐためのものではなく、むしろ、残される大切な家族への、最後の、そして最大の思いやりと言えるでしょう。事前相談を行うことには、計り知れないメリットがあります。まず、ご自身が「どのようなお別れをしたいか」という意思を、明確に形にしておくことができます。葬儀の形式(家族葬か一般葬か)、規模、宗教、祭壇に飾ってほしい花、流してほしい音楽、そして遺影に使ってほしい写真。これらの希望を事前に葬儀会社に伝えておくことで、いざという時、ご遺族は「故人はどうしてほしかったのだろう」と迷うことなく、あなたの遺志を尊重した、後悔のないお見送りをすることができます。次に、費用の面で大きな安心感が得られます。事前相談では、希望する葬儀の内容に基づいた、詳細な見積もり書を作成してもらうことができます。これにより、葬儀にどれくらいの費用がかかるのかを具体的に把握でき、必要な資金を準備しておくことが可能になります。また、複数の葬儀会社を、時間的にも精神的にも余裕のある状態で、冷静に比較検討できるという点も、非常に大きなメリットです。各社のプラン内容や料金、そして何より担当者の人柄をじっくりと見極め、心から信頼できる一社を選んでおくことができるのです。そして、この事前相談がもたらす最大の恩恵は、残されるご家族の負担を劇的に軽減できる、という点にあります。大切な人を失った直後の、深い悲しみと混乱の中で、葬儀社を探し、短時間で多くの決断を下さなければならないご家族の心労は、想像を絶するものがあります。しかし、生前にあなた自身が葬儀社を決め、希望を伝えておいてくれれば、ご家族はただその会社に一本電話をするだけで済みます。その後の手続きもスムーズに進み、ご家族は、事務的な作業に追われることなく、純粋にあなたを偲び、お別れを惜しむという、最も大切な時間に心を集中させることができるのです。事前相談は、残される家族への、最高の贈り物。その一歩を踏み出す勇気が、未来の家族を深い悲しみから救うことになるのです。
葬儀会社の事前相談が家族を救う