ここでは、実際に起こりがちな葬儀会社とのトラブル事例とその回避策について学び、自衛のための知識を身につけましょう。最も多いトラブルが「高額な追加請求」に関するものです。最初の打ち合わせで提示された見積もり額を、最終的な請求額が大幅に上回っていた、というケースです。これは、見積もり書に「ご遺体安置料」や「ドライアイス代」といった、状況によって変動する費用が含まれていなかったり、その説明が不十分だったりした場合に起こります。回避策としては、契約前に「この見積もりから、追加で費用が発生する可能性がある項目はどれですか?その場合、最大でいくらくらいになりますか?」と、徹底的に確認することです。そして、すべての項目が記載された、最終的な総額が明記された見積もり書を受け取るまで、決して契約しないことです。次に、「契約内容と実際のサービスが違う」というトラブルもあります。例えば、「祭壇の花は、故人が好きだったこの花で」とお願いしたのに、当日用意されていたのは全く違う花だった、といったケースです。これは、担当者とのコミュニケーション不足や、社内での情報共有がうまくいっていない場合に起こりがちです。回避策は、打ち合わせの際に決まった重要な項目は、必ず書面に残してもらうことです。口約束だけに頼らず、議事録のような形で記録を共有することで、「言った、言わない」の水掛け論を防ぐことができます。また、「遺体の扱いが雑だった」という、故人の尊厳に関わる、最も悲しいトラブルも報告されています。ご遺体を搬送する際に乱暴に扱われたり、安置されている間のケアが不十分だったりするケースです。これは、契約前にその会社の評判を調べたり、担当者の言葉遣いや立ち居振る舞いから、故人への敬意が感じられるかどうかを、注意深く見極めるしかありません。万が一、こうしたトラブルに巻き込まれてしまった場合は、一人で抱え込まず、国民生活センターや、業界団体が設けている相談窓口に連絡することも重要です。しかし、何よりも大切なのは、トラブルを未然に防ぐこと。そのためには、ご遺族自身が、冷静な目で葬儀会社を比較検討し、納得のいくまで対話する、という強い意志を持つことが不可欠なのです。