葬儀や告別式に続いて行われる火葬には、故人を見送る最後の儀式として、守るべき服装のマナーや作法が存在します。慣れない場での振る舞いに戸惑うことがないよう、基本的な知識を心得ておくことは、遺族への配慮にも繋がります。まず服装ですが、基本的には葬儀・告別式に参列した時と同じ、正式な喪服を着用します。男性はブラックスーツに白のワイシャツ、黒のネクタイと靴下、光沢のない黒い革靴が基本です。女性は黒のアンサンブルやワンピースに、黒のストッキングとパンプスを合わせます。アクセサリーは結婚指輪以外は外し、着けるとしても一連のパールのネックレス程度に留めるのがマナーです。火葬場に到着したら、まず私語を慎み、厳粛な雰囲気を保つことが大切です。携帯電話はマナーモードにするか、電源を切っておきましょう。炉前での最後の別れの際、指示があるまでは棺に触れたり、大声を出したりしないようにします。火葬中の待合室では、故人の思い出を語り合うのは構いませんが、大声で笑ったり、騒いだりするのは厳に慎むべきです。そして、最も重要な作法の一つが「収骨(お骨上げ)」です。地域によって多少の違いはありますが、一般的には二人一組で一本の骨を拾い、骨壺に納めます。これは、故人が三途の川を渡る際の「橋渡し」をするという意味が込められていると言われます。箸から箸へとお骨を渡すこの作法は、日常の食事では「拾い箸」として忌み嫌われる行為ですが、この場に限って許される特別な儀式です。拾う順番も、足の方から始まり、上半身へと進み、最後に喉仏を喪主が納めるのが一般的です。これらの作法は、故人への敬意を示すためのもの。一つひとつの意味を理解し、心を込めて最後の別れに臨みましょう。